私立高校に絞る。 朝倉和泉著「還らぬ息子泉へ」から
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       二学期の成績は予想以上に落ち込みました。これでは第一希望の都立ど ころか、第二、第三希望でも無理でした。でも、私達は、もう二学期のう ちに都立放棄を決めていたのでしたね。あなたがあまりにも勉強をしない ので、もうすぐ受験なんだからと例のお説教をしたら、突然べソをかいた ことがあった。つい最近まで、X学園、X学園と夢中だったのに、と意外 な気持で、 「そんなに勉強するのいや?」  と聞いたら、あなたはいよいよ涙をポロポロこぼしながら強くうなずき ました。胸がつまるほどかわいそうでした。都立はだめだなとママは思い ました。将来に対する特別な志望もないようだし、都立に入ればこのまま さらに三年間、受験勉強を続けることになろう。そんなことをしたら、こ の子はどうなってしまうか・・・・。 「じゃ、やっばり私立だね。あと少しだから我慢して頑張りなさい。やる だけやって落ちるのなら仕方ないけど、最初っから諦めて努力もしない  子は嫌いよ。試験に落ちたって、努力したことはちゃんと身につくんだ  から」  あなたは黙ってうなずきました。でも、お腹の中は、「何をいうか」と 反撥で一杯だったに違いありません。あなた達が計られるのは、すべて 「結果」によってでした。「結果」が悪ければその過程がどんなに立派だ ってダメなんです。過程を評価してくれる人なんかどこにもいやしない、 学校でも、社会でも。悲しいことだけど世間というのはそんなものなので す。  ママの言葉は、あなたにとっては「きれいごと」でした。相も変らぬ理 想論を振りまわし、厳しい現実を把握しようとしない母親に、あなたはど んなにか失望していたことでしェう。 index  年表  next (早大学院)