Twilight's Last Gleaming.
朝倉和泉著「還らぬ息子泉へ」から
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今日は、あなたの好きな夕やけでした。まさに沈もうとする真っ赤な太 陽が、地平線にたなびく黒い雲のまわりを金色にふち取り、葉の落ちた木 々の枝を黒いシルエットにして浮び上らせています。 こんな夕やけを見ると、あなたはいつも二階から駆け降りてきました。
「ママ、ポクの好きな夕やけだよ。早く来て!」
それから二人で、その陽が沈みきり、あたりが急速に闇に包まれていく 様を眺めるのでした。 "Twilight's Last Gleaming." 中二の頃から、ノートに、教科書に、書きなぐられ続けているこの文字。 どこからきた言葉でしょう。この言葉のどこに、そんなに惹かれたのでし ょう。(・・・・略・・・・)
「無題」
世田谷区の住民が一人残らず眠っている数秒間が 二十年に一度ある。 世田谷区で 起きている人は一人もいない。 人も通らない。 道路には 車が一台もいない。 その薄暗い道を、 人っ子一人通らぬ夜の道を、 靴音高く 走り抜ける男がいた。 笑い声を高らかに上げながら。 彼は この二十年間 このわずか数秒を じっと待ち続けていたのだ。 男が消えた。 誰かが 目を覚ましたのだ。
(中学三年のノートより)
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