朝倉泉の中学時代の同級生の座談会 (3)/8
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本多
「愚劣な大衆」という言葉が、遺書ではものすごく強調されて出て 来るんだけど、なぜあそこまで徹底的に言うようになったのかわかり ますか。それとも彼だけでなく、あのクラスの男の子はみんなそんな ふうに考えていたということなのかな。
P
結構みんなそう思っているんじゃないの。
O
そりゃ、うそだ。
Q
そうは思ってないよ。
O
思ってないや。
本多
あんなふうにB君がシツヨウに繰り返して言っているのは、どうい うわけだと思いますか。
O
あまりにもみにくいから、区別したかったんじゃないの。
P
むずかしいけどさ。全然おれたちはおかしいとは思わなかった。
本多
彼の行為が?
P
うん。
本多
やりそうなことだと思った?
P
やりそうなことというか、わかる。
本多
どうもよくわからないんだな。お母さんの話もだいぶ聞いたんだけ ど。開成高校生の事件はあの背景みたいなのがわりあいわかるんですよ。
O
母親じゃ何もわからないでしょう。
本多
それでみなさんの見方を聞いてみたいんですよ。むしろ同級生が一 番わかるんじゃないかと思って。どういうことなのかな。
P
考えはともかくとして、言い方が・・・。
O
考えもあれ似たようなもんだぜ。あの辺から来てるようなの・・・。
本多
「あの辺」て、どの辺?
O
筒井康隆。Bはあれから影響受けてる。
本多
ああ、あれ。
O
だれもそのこと全然書かないけどさ。
P
ほんとな。
O
こっちが言っても全然書かないんだもん。
P
あれがもとになったと思う。
O
なあ。あの影響だよ。
Q
「廃塾令」だろ。
本多
それ、なんですか。
Q
筒井康隆の「塾を廃止する制度」。そういう仮定のもとに小説を書 いた。
P
あれ、おれたちも読んでて面白かった。
本多
「筒井の本の影響が一番大きいのではないか」と皆さんが言っても マスコミは書かないのですか。
Q
書かない。
本多
前にそういうことをだれかに言ったわけ?
O
うん。新聞社とか・・・・。
P
森村誠一も最後に読んでいたから。
O
読みふけっていたと言っても書かない。
Q
今度の場合の事件はさ、おれたちはBとつきあっていたからわかる んだよね。つきあってない人でさ、いろんな批判する人が新聞や雑誌 でいるでしょう。めちゃくちゃなこと言ってるけどさ、やっぱり全然 知らないからね、Bのこと。
O
投書やなんか、すごいんだよな。よくあんなの書けるな。
P
自分のことじゃないから。
O
なんかすげえ根性だよ、新聞なんか見てるとさ。よくさ、「マイク ヘ一言」とか言ってさ、何々にすぐ感動しちゃうとか、すぐ書きやが ってよう。あれと似たような類だ、あれは。あんなの、暇な主婦かな んかがさ、「書くことなんかないか」って感じだぜ。批判だけしてよ。 そんな感じだあれは。
P
おれは構わんと思うけど。
O
構わんことない、むかつくぜ。
P
全然気にしない。
O
えれえ腹ア立つ。
本多
つまり内容がすべてマトはずれって意味?
O
勝手なことを言ってるって。知らないくせによ。
P
知らないなら、知らないなりに書いていいじゃない。
O
「知ったような気」になるのね。それですぐ社会情勢だとかよ、現 代の子供はとかなんとか言い出しやがってよ。
本多
B君の遺書の中に「この文体はある小説家の文体を借りて書いた」 って書いてあるけれど、それは筒井康隆かな。
Q
そうかも知れないね。
P
筒井康隆だよな。そうだよ。
本多
私は筒井康隆の小説を読んだことないんだけれども。あれだけ読ん だ。『大いなる助走』。お母さんが言ってたものだから。あれは方法 としては事件に直接関係のあるような、似ておったけれど。それから 『家族八景』というのがあるんだって?
Q
みた、みた。
O
ああ、『家族八景』。お手伝いの七瀬というのが、八つの家族をお 手伝いとしてぐるぐるまわって行ってね。その家の中での人の心理を 超能力で読めるわけね。その考えていることを、いやらしいことだと か、そういったことをズバズバ書いてあるの。それにしても、ひどい ことを書いてあるのは、小説よりさ、あっちの方。
Q
『面白半分』だろう。
O
ああ、『面白半分日記』
P
『面白半分』という雑誌があるでしょう。編集長は二年前まで筒井 康隆がやっていたんです。
本多
それに彼が何か連載していたんですか。
P
毎回、「面白半分日記」とかいって自分の一月分の日記を。それで Bもまねして書いてた。途中でやめちゃったけど。
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