朝倉泉の中学時代の同級生の座談会 (5)/8
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本多
中学3年の時の先生に会ったら、あの事件は全く「特殊」な事件だ。 つまり今のいろいろな一般性とは全く関係なく、特殊であると言った。 ではなぜ特殊であるかというと、それはちょっと個人的なことになる ので言えない、というのだけど。なぜあの先生が「特殊」ということ を言うのか、その理由はわかりますか。
O
もったいぶったんじゃない。
P
自分が今それを言っちゃえば、あとでどういう影響が自分にかかっ てくるか・・・・。
O
打算がひらめいたんだ。
本多
保身術か。事件当時はマスコミに追いまわされたようだからムリも ないが。
O
でも知らないんじゃないかしら。
P
あの先生なんか、何も知らないでしょう。
本多
特殊だと言ったあと一言こんどは「政治の貧困につきる」と言うの ですよ。そうすると特殊ではないのかな。特殊なら政治の貧困と無関 係になるんだけれどね。どうもよくわからないんだね、あの先生の言 うことが。
P
でも政治のことを持ち出したというのは、そこにつきるんじゃない の。今の社会のあれにつきるんじゃないの。政治の貧困ということな らわかるけれど。
本多
そうであれば「特殊」ということにならないじゃない。
O
いや、やっぱり特殊になるじゃない。われわれの受験の状況を特殊 だとは見ていないでさ。かなりベテランだから何人も何人も「いい生 徒」を送り出しているから、それが普通だと思っているからさ。Bが そういった一応一流校のところへ行ってさ、そしてあの事件を起こし たことがその特殊だと言ったのじゃないの。
本多
つまり、もうちょっと何でもない″不良″かなんかが事件を起こ したのなら特殊じゃないけど・・・・。
O
そうそう。
本多
ああ、なるほどね。そうすると小学校の先生の見方と似てくる。
P
人殺しま特殊でしょう。どういう見方をしても。
本多
そりゃ、殺人犯なんてみんな特殊だといえば特殊になるけれどそれ はまた意味が違う。それで小学校の時の担任の先生に会ったのね、そ したら・・・・。
P
おしゃべりで早熟な子供ですね」って言われたとか言ってた。Bが 小学生のとき。
本多
いや、私が会ったのはそれと学年がちがうときの先生かも知れない けど、やっぱり「特殊」だと。どういうふうに特殊かというと、あの 子はそんなに変わっていなかった。だれだって変わった面があるから、 ある程度変わっていると言えば言えるけど、桁はずれな変人ではない と。そういう特殊。
P
なんだ。
O
常人がやったから、あれは特殊だっていうの?
本多
うん。むしろそういう言い方ね。
O
精神異常がやったらむしろ異常だと思うけど。変なの。
本多
同級生としてみても、そういう感じはある?つまり、そう大した変 人ではない、だけれどもああいうことをやったと。
O
確か変人でもあったな。
P
ああ、ちょっと変わってたな。
Q
考え方が違うから。
O
ああ、考え方が違うなあ。そりゃ違うなあ。
P
家からきてるよ。
Q
そうだよ、家からきてるよ、絶対に。
O
家から圧迫されてるからさ。
P
自分のある部分だけが妙に発達したんじゃないの。
Q
だからいつもそれ聞いててさ、「可哀想だなあ」と思っていたこと があったよ。家がさ、そういう家柄だから。
本多
家がどういうふうに?つまりエライ学者の家だから?
Q
だからしつけが厳しいし、いつもぼくたちにさ、お祖母さんの話と か言うでしょう。
P
お祖母さんと一緒に高校入試の問題を解くなんて考えられないよ。
O
いや、共通一次の大学の入試だよ。
P
お祖母さんに教えてもらうなんて。
O
人間じゃねえよ。
本多
家といっても、特にお祖母さんかな。
O
お祖母さんとな、お母ちゃんとな。
本多
お母さんもそう?
P
話は同じだよな。
O
ああ話は同じだよ。むしろお母ちゃんの方が結構厳しいくらいの評 価をしてるのよ。
Q
なんかさ、Bは母ちゃんがタバコを吸うと言ってたけれど、実はタ バコ吸っていないって彼女は言ってるよ。
本多
それがまたどうして関係があるの。
P
Bは「タバコを吸う女はきらいだ」ってふだん言ってた。母親がタ バコを吸うから何とかかんとかって。
O
「女のくせにタバコ吸いやがって」と。
P
だけど母親の話によると、なんだか吸わないとか。
本多
そんなことでB君が嘘を言ったってしょうがないという気がするけ ど、そこがB君らしいところかもしれない。母親は本当に吸わないみ たいよ。
O
すげえ矛盾なんだ。
P
タバコを吸う女って「一流面した女」という意味のかわりじゃない の。社会に出て一応ちゃんとやっているから一人前って顔してるって いうじゃない。一人前の男がタバコを吸う、日本ではそんな感じだか らね。
Q
だから女を批判したんだよ、あいつは。
本多
それはちょっと意外だな。お祖母さんと同じくらいお母さんのこと を言ってた?
O
ああ、言ってた、言ってた。
Q
圧力みたいなものを。
O
そう、ぐるになってる。妹もぐる。
本多
もう被害妄想だから・・・・。
Q
ふつう、どこだって「うちの子は勉強しませんよ」なんて言ってる 人いるけど、勉強させてるじゃない。あそこもそう。
O
えれえ勉強させてたぜ、Bのとこだって。『キネマ旬報』って映画 の雑誌みるのもさ、食卓なんかで立って読んでたら怒られるからさ、 表紙にね、参考書の表紙つけてるんだってさ。そうすれば勉強してい るようでお母さんが安心するって言ってたもの。
本多
おやじさんのことはあまり話してなかったのですか。
Q
うん。ほとんど話してないね。
O
離婚のこと話してたね。だらしがねえとか。
本多
おやじさんのことを「だらしがねえ」と?
O
うん。
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