朝倉泉の中学時代の同級生の座談会 (6)/8
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本多
さっきの「特殊」の話にもどるけどね。同級生の目で見て、変って たといえばある程度変ってたと言えるけれど、そんな大変な変人では ない。従ってあの事件と彼のことが結びつかない。そういうふうなこ とが言える?
P
言えないこともないけどな。結びつかないというのは?
本多
つまり、ああいう事件を起こすというふうには結びつかない。
O
全然結びつかないとは言えない。さすがに聞いた時はびっくりした けれど、考えてみれば、全く別のやつが、底抜けに明るいやつがやっ たんだったらすげえ特殊だなんて思うだろうけど、Bがやったらすげ え特殊だなんて思わなかったよ。
P
特殊だとは思わなかったけど、でかいことやったなと思ったよ。
Q
えれえことやったと思うよ。
P
後で考えると何でも納得するけどね。きみがやったって特殊だとは 思わないけどね。
本多
もし
O
君がやったら「あいつならやるだろう」と。
O
悲しいなあ(笑)。
P
何でも理由がつけられるから。
Q
自分で異常なことだと思いこもうとしないからね。
O
おかしくもないじゃない。全然おかしくもないぜ。
P
だれがやったって、だれでも可能性を持っているからね。
Q
なんだ、悟ってるようなこと。
P
でも、ふつうそう言わない?可能性がなかったら大変じゃないか。 人を殺せる可能性もないなんて可哀想な人間じゃないか。
O
ああいった事件が家とか性格に依存してるんだったら、かなり可能 性はあったよ。えらい可能性だったよ。
P
やはり気が弱いからでしょう。気が強かったらあんなことしない。 お祖母ちゃんのこと叩きのめしてなぐつたり。
Q
あれ「鬱積する」って自分で言ってたような気がする、おれ。もっ と「反発したい」って。
P
愚痴こぼすんじゃな。
Q
おれたちにBが言ったってしようがないよな。おれたちがかわりに 言ってやればよかったな。
O
おれたちが言ってやればよかったな。
Q
本当だ。
P
ああ、残念だね。
本多
だれに?
P
お祖母さんやお母さんに。自分でそれを言えなくておれたちに言っ てたからね。
本多
それは本当に惜しかったね。
Q
そんなこと言ったら、「こんな馬鹿な子と遊んではいけません」っ て(笑)、言われたんだもの。実際に言うんだから困るよな。
P
あいつだったら本当小説家になれたぜ。
Q
おまえ本当になれると思った?
O
小説家?
Q
まあいいけど。考えると無理だな、筒井康隆、好きじゃないから。
本多
それじゃ、B君は普通の程度に友人はいたといえるわけだ。
Q
いたよ。うちにも四、五回来ていたし。自分が帰るとき、遊んでい ても待っててくれたし。友達でも試験のときは、あのくらいできれば ふつう帰っちゃうもんね。
P
授業が終ると駈けて帰る人がこの人(笑)。
本多
でもあとの方で馬鹿に急激に成績がさがったと言ってるけれども、 あれは何か原因があるんですか。
P
さがってはないけど、勉強あまりしなくなったっていうこと。みん なが勉強するようになるから順位がさがるということでしょう。学力 自体はさがっていない。
O
学校の成績で言ってるからさがったって言ってるんだよ。
P
学校の方はそうだよ。でもどっちにしても、一学期に比べれば勉強 しなくなったな、二学期の方が。
O
三一なんて驚異的な内申だよ。おそろしくさがってるじゃない。
P
普通の少年でさ、おれたちと変りなかったのにさ、家がいけなかっ たんだよね。
本多
お祖父さんは?
Q
お祖父さんは尊敬してたみたい。
P
そんなにしょっちゅう話題に出ないよね。
O
でも自慢したらおしまいだよ。「B家」とかいって自慢してたもん な。
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